やったことがないなら、やってみる|ハードテイルでダウンヒルを始めた話 — Un Authorized 33rpm 6th【スタッフ愛車紹介#03】

ダウンヒルは「攻めなければ」楽しい遊びだった

スタッフ愛車紹介、第3回です。
今回は西上のUn Authorized 33rpm Project 6th Gen を紹介します。

前回(#02)の記事はこちら 👉 使われている自転車が、一番美しい — Sig.Randoという相棒

このバイクに乗り始めたきっかけは、ダイアテックの増田さんから掛かってきた1本の電話でした。
2024年のゴールデンウィークごろだったと思います。

増田さんは、MTB界隈で 「ハードテイルの神」 と呼ばれていたりする人で、しかも 33rpm の開発にも関わっている。
つまりこれは、ハードテイルの神から、自身が形にしたハードテイルを直々に勧められている、という状況です。と言っても、増田さんにとってはいつもの営業電話の1本だったんだと思います。

「乗ってみませんか? 要りますよね?」

そもそも僕は、街乗りメインで MTB もお遊び程度、ロードも運動がてら乗るくらいの「エンジョイ MTB ライダー」。
33rpm はガチ向けな人のためのもので、自分には無縁だと思っていました。

でも、増田さんからの電話を断るというのは、いわば 神からのお告げを断る ようなもの。
やったことがないことを、やってみよう。
気がついたら「お願いします」と答えていました。


フレームとフォークだけ手配して、あとは在庫と中古でまとめた

そこから手配したのは、フレーム本体と、フロントの Öhlins RXF36 m.2(エアバネ) の2つだけ。
あとのパーツのセレクトは、グランピーの MTB番長・清水さん にぜんぶ丸投げしました。
店の在庫とか中古で手に入れたものを、いい感じに組み合わせて1台にまとめてくれた、という感じです。

最初から「フルスペックの最新ダウンヒル機を作ろう」とは思ってませんでした。
あくまで試しに乗ってみるための1台、というつもりでした。

Un Authorized 33rpm

組み上がってみると、これがとても中古パーツ主体で組んだとは思えない、かっこいい1台になっていました。
ハードテイルにストロークたっぷりのフォーク、という 33rpm らしいスタイルも迫力があって、すっかり気に入ってしまいました。

ちなみにダウンチューブのロゴは、グランピーのペインター・竹之下 にカッティングシートで作ってもらったもの。
このフレーム、ノーマルだとダウンチューブに何のデカールも入っていなくて、シンプルといえばシンプル。
でも、ちょっと寂しかったのと、ちょうど アルミ箔のような質感のカッティングシート があったので、それで作ってもらいました。


神からの指導:「乗り方が悪い」

33rpm は 下りに振った設計 のフレームで、登りは正直しんどいです。
特に登りでは、フロントが浮きやすい。

組んでしばらく経った頃、「これ、ちょっと登りにくいです」と、増田さんにこぼしてみました。

「西上さん、それは乗り方が悪い。もっとリアタイヤに荷重を乗せて。」

ハードテイルの神からのご指導です。
言われたとおり、リアタイヤへの荷重を意識して「どう乗れば登れるか」を考えながら走ってますし、最近はむしろそれが楽しくなってきました。
…とはいえ、正直、まだうまくは登れていません。修行が足りないだけだとは思いますが、その試行錯誤も込みで面白いバイクだな、と思っています。


2024年6月、十種ヶ峰で「楽しい」が分かった

組んでから最初に持ち出したのは、2024年6月の十種ヶ峰ウッドパーク
山口県と島根県の境にある、ダウンヒルが楽しめるコースです。

このときの様子は YouTube にも上げているので、興味のある方は見てみてください。

実際に走ってみて思ったのは、ダウンヒルって「直ちに危ない遊び」ではないんだな、ということでした。
攻めない、無理しない、自分のスキルの範囲内で楽しむ。それだけ守れば、十分に楽しめる。
これは結構大きな発見でした。

最初はロデオ、慣れたら操縦感

ただ、正直に書いておくと、最初にゲレンデでハードテイルに乗ったときは、もうほとんど ロデオ 状態でした。
リアサスがないぶん、地面の凸凹がそのまま身体に返ってきて、いつ振り落とされてもおかしくない感じ。

下りはペダルの上に立って乗るんですが、最初は本当に振り落とされそうになる。
でも、前後に荷重を移動させていくと、ふっと落ち着くポイント があるんです。
これがいわゆる「自転車の中心」なのかな、と最近は思っています。
このポイントを探りながら走る試行錯誤自体が、思っていた以上に面白い。

特にハマったのが、カーブやコブで 抜重がしやすい こと。
リアが固いぶん、タイミングよく荷重を抜くと、バイクがスッと動く。
「乗っている」というより「操っている」感覚が強くて、それがとにかく楽しい。


2024年11月、ホイールとブレーキを刷新

最初は様子見だったんですが、走るたびにどんどん楽しくなってきました。
そんな2024年11月、2点のパーツを入れ替えることになりました。
といっても、今回も自分から「変えたい!」と動いたわけではなくて、きっかけはどちらも外からやってきたんですが……。

ホイールを ENVE M6 に変更

ENVE M6

ENVE M6 にした理由は、別にホイールの性能に不満があったわけではないです。
そもそも、それまで使っていた レイノルズ(Reynolds)のカーボンホイール にも、まったく不満はなかった。
これもまた、増田さんからの電話でした。
「要りますよね?」

ちょうど ENVE が MTB 用ホイールをリリースしたタイミング で、しかも今回のモデルは、軽さだけでなく、適度な柔軟性を持たせることに成功した ——というのが売りでした。
カーボンホイールって、軽くて剛性は高いけど、突き上げが厳しい、というイメージがあるんですが、そこを覆してきた、という話です。

結果として、軽さははっきり体感できました。
カーボンならではの軽さで、登りでも下りでもバイクが俊敏に動きます。
ただ、売りだった「柔軟性」のほうは、正直よく分かりませんでした。
もともとタイヤが太くて空気圧も低いので、ホイール側の柔らかさまでは感じ取れなかった、というのが本音です。

ブレーキを TRP EVO PRO に交換

TRP EVO PRO

組み立て当初は SRAM の4ポッドブレーキ が付いていて、これにも全く不満はなかったです。
ただ、店として TRP EVO PRO を新しく入荷したタイミングだったので、お客さんに紹介する前に、まず自分のバイクで使ってみよう、ということで交換しました。

で、これがとても気に入りました。
4ポットの効き味はもちろんしっかりしてるんですが、特に良かったのは ブレーキレバーの調整が工具なしでできる という点。
リーチや当たりの位置を、グローブを着けたままサッと変えられる。
細かいことなんですけど、毎回の出発前のセットアップが地味に楽になります。

ダウンヒルでは、ブレーキの安心感がそのまま「攻められる量」を決める、みたいなところがあります。
そういう意味でも、信頼できる1セットが手元に来た感じ。
ブロンズ系の質感も気に入っていて、コックピットを覗き込むたびにテンションが上がります。


サスをエアからコイルに変更

そしてつい最近、フォークをもう一度入れ替えました。
最初に組んだ Öhlins RXF36 m.2(エアバネ) から、最新世代の Öhlins RXF36 m.3 のコイルバージョン に交換しています。

理由はシンプルで、コイルスプリングを試してみたかった から。
あと、店としてお客さんに紹介する立場としては、自分で乗ったことがないものを「いいですよ」とは言いたくないんですよね。
だったら、まず自分で乗ってみよう、ということで思いきって入れ替えました。

結論から書くと、このコイルスプリングが めちゃくちゃ最高でした。

もともと Öhlins は動きの良いフォークとして定評があるんですが、コイルに変えると、その動きがさらに別物になる。
微細な路面のザラつきから大きな衝撃まで、ぜんぶ 線で繋がるように スムーズに動きます。
ハードテイルにこのコイルフォーク、というのは、想像以上に相性が良かったです。

リアにサスペンションが無いぶん、フロントの仕事量は多くなります。
そこをこのフォークがしっかり受け止めてくれるので、ハードテイルでもラインの自由度がぐっと広がりました。

グリップは UnAuthorized 110 NEVER EVER GRIP HALFCARAMEL、カラーは PINK/BLUE。
これも、ちょうど 33rpm を組むタイミングで新しく発売されたグリップで、サンプルを送ってもらったんです。
試しに使い始めてみたら、これがすっかり気に入ってしまいました。
フレームと同じ UnAuthorized ブランド、というのも揃った感じがして嬉しいところ。

特にお気に入りなのが、グリップ端のキャップ(エンドキャップ) のデザイン。
ピンクとブルーが滲んだような色合いで、なんだか可愛らしくて気に入っています。

110mm という短めの長さは、日本人の手の大きさに合わせた設計らしくて、レバー位置の取り回しがしやすいです。
コンパウンドは独自の "NEVER EVER" で、ネバい感触なのに不思議とベタつかない。
内側には 3mm のクッション層が入っていて、長く走っても手の疲れが残りにくい。
おまけに "アロマド" という香り成分まで仕込んであって、握るたびにほんのり香ります。
ここまで作り込んであるグリップ、なかなか珍しいと思います。


ドライブトレインまわり

e*thirteen

タイヤは Maxxis の Minion
ただ、 前後とも「フロント用」 を履いています。
清水さん曰く「そのほうが転がり軽くなるし、トレイルで遊ぶならこれが面白いんじゃないか」とのこと。
番長のセレクトが効いている、地味だけど信頼のおける一手です。

リアカセットは e*thirteen
これも清水さんセレクトで、「SRAM 純正よりリーズナブルなので」という理由らしいです。
こういうコストコントロールも、番長に任せて良かったところ。

formosa crank

クランクは FORMOSA、長さは確か 165mm だったはず(うろ覚えですみません)。
ちょうど ショートクランク が話題になり始めた頃で、せっかくならその波に乗ってみよう、ということで短めを選びました。
今のところ乗り味は気に入っていて、機会があればもっと短いのも試してみたい、とまで思っています。


仕様まとめ

項目 内容
フレーム Un Authorized 33rpm Project 6th Gen(ハードテイル)
フロントフォーク Öhlins RXF36 m.3(コイルバージョン)※当初は m.2 エアバネ
ホイール ENVE M6(2024年11月アップグレード)
ブレーキ TRP EVO PRO(2024年11月アップグレード)
ハンドルバー Renthal
グリップ UnAuthorized 110 NEVER EVER GRIP HALFCARAMEL(PINK/BLUE)
クランク FORMOSA(165mm/ショートクランク)
タイヤ Maxxis Minion DHF(前後とも)
想定用途 ダウンヒル/トレイル/山遊び全般

50歳近くから始めても、新しい遊びは見つかる

このバイクを組んで一番良かったのは、「ダウンヒルは自分には縁がない」と思い込んでいた壁を取り払えたことかなと思います。

攻めない、無理しない、ペースを守る。
それだけで、十分に楽しい遊びになる。

ハードテイルというのも、今の自分にはすごく合っています。
リアサスペンションに頼らないぶん、荷重の使い方も考えないといけなくて、それが面白い。

そして気がつくと、2026年、ついに初めての フルサスペンション DH バイク にも手を出していました。
Orbea Rallon DH
動機はやっぱり、やったことがなかったから、やってみたかった、というのが大きいです。
ダウンヒルが面白くなってくると、自然とフルサスにもチャレンジしてみたくなった、という流れですね。
結局、33rpm を組んだときと同じ理由で、また新しいバイクに乗ることになりました。

ちなみに、これはフルサスがハードテイルの「ワンランク上」だから、という話でもないです。
ハードテイルは今もハードテイルとして楽しいし、フルサスはフルサスで、また違う遊びでした。
ジャンルが一つ増えた、と言ったほうが近い気がします。

33rpm がきっかけで、ここまで広がるとは思っていなかった。
新しい遊びが、また一つ増えました。

「興味はあるけど、自分には難しいかな」と感じている方こそ、一度試してほしいです。
たぶん、思っているよりずっと楽しめます。


次のバイクが、もう楽しみすぎる

33rpm はすでに 7th 世代 が登場していて、6th より軽くなっています。
正直、最初は 7th をパスしたんですが——先日お客さんに納車した 7th が めちゃくちゃかっこよくて、思いきり羨ましくなってしまいました。次は絶対に買おうと思っています。

さらに、もうすぐ 78rpm という新しいモデルも発売予定で、これがまた楽しみで仕方ない。
先日、バイクランド尾道で 増田さんが乗っているプロトタイプ に乗せてもらったんですが、これがもう、めちゃくちゃ良かった。恐らく120mmストローク想定のフレームですが、増田さんのようにリジッドで乗るのも楽しそう。


次回予告

次回スタッフ愛車紹介 #04 は、また別のスタッフのバイクを予定しています。
お楽しみに。


こんな1台が気になった方へ

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