広島の雑草で塗ったグラベルバイクを、アメリカのグラベルの聖地に持って行きました

このフレームの金色の模様、絵ではありません。本物の草です。

広島を流れる太田川。その河川敷で摘んできた雑草を、判子のようにフレームに押し当てて、金で写しています。塗ったバイクは、ENVE MOGというグラベルバイクです。

なぜ、わざわざ本物の草なのか

竹之下いわく、「自分は画家ではなくペインターだから」。

きれいな草の絵を筆で描くのは無理だ、と本人は言います。でも、本物の草をそのまま使えば、葉脈の1本まで写る。しかも、完璧には写らない。かすれたり、崩れたりする。その崩れがちょうどいい、というのが竹之下の考えです。 完璧なものは面白くない、と。

よく見ると、草の種類も一つではありません。地面を這う下草と、上まで伸びる草。フレームの場所によって使い分けています。その辺に生えている広島の草です。

ダウンチューブの金色ENVEロゴと、草を写した金の模様。かすれ具合まで含めて狙い

黒いフレームを真っ黒に塗ってしまうより、こうして表情が出たほうが、重く苦しくならない。そういう狙いだそうです。

トップチューブ付近の金色MOGロゴと、草の模様のアップ

この草の模様、どこから来たの?

じつは、元になった絵があります。川端龍子(かわばた りゅうし)という日本画家の「草の実」という作品です。濃紺の地に、金色で草花を描いた絵。ただし、上等な花ではありません。龍子が自宅の近くで摘んだ、ただの雑草です。

当時の日本画は、立派な花を題材に選ぶのが当たり前でした。そんな中で龍子は、道端の雑草をあえて選んで、金で描きました。誰も気に留めないものを、正面から描いたわけです。

竹之下がなぞったのは、絵そのものより、この姿勢です。子どものころに教科書で読んだ「鹿」という詩が、ずっと心に残っているそうです。それ以来、その辺のなんでもない草でも、よく見ると、金色に輝く命を感じるそうです。金にしたのは、きれいに見せたかったからではありません。誰も見ない草を、あえて主役にしたかった。本人も、龍子と同じ気持ちなんだそうです。

その草は、グラベルバイクが走る砂利の道にも生えています。摘んだ草も、走る先の草も、同じ、その辺の草です。

その一台を、本場に持って行きました

この6月、アメリカ・ユタ州オグデンへ行ってきました。ENVEの本拠地で開かれる、グラベルイベント「GRODEO」に参加するためです。グラベル好きなら一度は行きたいイベントです。

HOME OF THE GRODEO。会場はENVEのお膝元、ユタ州オグデン

会場には、世界中のカスタムペイントされたENVEがずらりと並んでいました。その中に、僕らの一台も置かせてもらいました。

足を止めて覗き込む人が何人もいました。広島の河川敷で摘んだ草だとは、たぶん誰も気づいていません。それでも、遠く離れたアメリカで、何人もの人が足を止めてくれました。塗った本人も、なかなかない経験だったと思います。

GRODEO会場で、竹之下ペイントのMOGを覗き込む人たち

こういうこともやっています

グランピーは広島の自転車店です。竹之下は、グランピーのペインター。普段は、クロスバイクの傷補修から、今回のようなデザインのペイントまで、いろいろやっています。高い車体じゃなくても大丈夫です。

派手なことをしたくて草を使ったわけではなくて、「その辺の草でも、やり方次第でこうなる」という、わりと素朴な話です。ただ、それが本場まで行って人の目を留めたのは、素直にうれしい出来事でした。

このバイクは、現在店頭に展示しています。愛車の小さな傷でも、思い切ったカスタムでも、ペイントのこともお気軽にご相談ください。


草を使ったペイントの様子は、動画でも見られます。よかったら見て下さい。

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